法律コラム

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相続人と二重資格

事例|代襲相続人が孫養子でもあるケース

父が亡くなりました。母はすでに亡くなっており、父の子は私(長男)と姉(長女)の2人でしたが、父が亡くなる2年前に姉も亡くなり、その際に、姉の子、つまり父にとっては孫(私にとっては姪)が、父との間で養子縁組をしています。

父の遺産は預貯金だけで、3000万円を遺してくれていたので、姪と2分の1に分けようと思い、49日法要の後に甥に話をしたところ、姪は、長男の代襲相続人としての地位と養子としての地位で3分の2の相続分があるから、2000万円を受け取れるはずだ、と言ってきました。

姪と揉めたくはないので、姪の言うとおりにしても構わないのですが、そもそも、姪のように代襲相続人と養子の地位を兼ねる場合、子(養子)として相続するのか、代襲相続人として相続するのか、あるいは両方の地位で相続権を有することになるのか、どの考え方が法律的には正しいのでしょうか。

架空の事例です

はじめに

相続人が二重資格を有するケースでは、その有する資格に応じて、二重資格が認められる場合と、一方の資格しか認められない場合があります

遺産分割では、相続関係を正確に把握し、相続人の相続割合を正しく理解することは極めて重要です。そのため、二重資格の場合の相続権についても、正確に理解しておく必要があります。

それでは以下で、詳しく見ていきましょう。

01 二重資格 ~養子と代襲相続人

親が早くに亡くなった場合や相続対策など、さまざまな理由で、祖父母が孫を養子にする場合があります。

その後に、例えば祖父が亡くなった際、親がすでに亡くなっているような場合には、その孫は、法律上、祖父の相続人として、親の代襲相続人としての地位と、養子としての地位の二重の資格を有することになります。

このような場合について、一方の資格のみを認めるのか、あるいは二重の資格を認めるのかについて、最高裁の判例はありません。

もっとも、登記先例 (昭和26年9月18日民事甲1881号民事局長回答)では、相続人が養子と代襲相続人の二重の資格を有するケースにおいて、両方の法定相続分を有することを認めています。

そのため養子と代襲相続人の二重の資格については、実務上も、各資格における法定相続分を合算して計算する運用が確立しています。

02 二重資格 ~配偶者と兄弟姉妹

これに対し、夫の相続で、婚姻の際に夫が妻方の婿養子となっており、子供もおらず両親が既に他界してしまっているような場合、その妻は、配偶者としての地位と、兄弟姉妹としての地位(実子たる妻と養子たる夫との兄妹関係)の二重の資格を有することになります。

このような場合に、二重の資格が認められるかについて判例はなく、登記先例(昭和23年8月9日民事甲第2371号民事局長回答)では、配偶者としての相続権のみを有し、兄弟姉妹としての相続権は有しない、との判断が示されています。

養子と代襲相続人の二重資格の場合は、いずれも同順位の血族相続人としての二重資格であるのに対し、妻と兄弟姉妹の二重資格は、配偶者相続人と血族相続人の二重資格であるため、この点が、登記先例の結論に違いが生じた理由と考えられます。

そして、配偶者相続人の法定相続分は、第2順位の血族相続人との共同相続の場合は3分の2(民法第900条2号)、第3順位の血族相続人との共同相続の場合は4分の3(民法900条3号)とされており、そもそも配偶者相続人の法定相続分が優遇考慮されています。そのような点も、二重資格を認めない理由の1つと考えられます。

03 事例の検討

事例のケースでは、父の「子」は、実子である相談者と姉、養子である姪の合計3名です。そのため、法定相続分は各3分の1となります。

そして、姉が父より先に死亡しているため、代襲相続が発生し、姉の実子である姪が代襲相続人となります。

その結果、姪は、父の相続において、「養子」と「代襲相続人」の二重の資格を有することになり、養子としての3分の1、姉の代襲相続人として3分の1の合計3分の2の法定相続分を有することになります。

 

まとめ

 POINT 01 相続人の法定割合を正確に把握することは、遺産相続の前提として極めて重要である

 POINT 02 養子と代襲相続人の二重資格の場合、各資格における法定相続分を合算した割合の相続権を有する

 POINT 03 配偶者と兄弟姉妹の二重資格の場合、配偶者としての相続権のみを有し、兄弟姉妹としての相続権は有しない

いかがでしたか。

相続人の二重資格については、養子と代襲相続人、配偶者と兄弟姉妹の場合で結論が異なりますので、まずは、戸籍等を取り寄せたうえで、相続関係を正確に把握できるようにしましょう。

事例のケースにおいて、姪は、父の養子としての地位と代襲相続人の地位の二重の資格を有することになるため、各資格の法定相続分を合計し、父の相続権について合計3分の2の持分を有することになるため、現在の実務の取扱いを前提にすれば、姪の主張は正しい、ということになります。

何とかなく不公平な印象があり、勘違いしやすい点ですので、相続分を確認する際は十分に注意しましょう。

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