特別受益・寄与分の時的限界と相続登記の義務化
遺産相続の基礎知識
2023/10/20
経営者の高齢化に伴い、事業承継のニーズは年々増しています。しかし、親族内に後継者がいないなどして、なかなか事業承継ができていないケースが散見されます。
そこで今回は、事業承継の手法について説明します。
被相続人が、個人事業主として事業を行っている場合、又は、非上場の会社(たいていは同族会社)の主要株主として同族会社により事業を行っている場合があり、相続開始により、相続人等が当該事業を承継する必要が生じます。
被相続人が個人事業主として事業を行っている場合には、相続人が相続財産である事業用資産を承継することにより、事業を承継することとなり、被相続人が非上場の会社の主要株主であれば、相続人が株式を承継することにより、事業を承継することになります。
被相続人の個人事業を相続する場合には、その事業に利用していた土地に関し、小規模宅地(特定事業用宅地、貸付事業用宅地)の適用が問題となります。
被相続人が非上場会社の主要株主である場合には、事業承継税制が問題になるほか、被相続人の所有する土地上で同族会社が事業を行っている場合には、その土地について小規模宅地(特定同族会社事業用宅地、貸付事業用宅地)の適用が問題となります。
このように、被相続人の死亡後に事業を承継する場合には、相続税の課税対象となります。
以上に対し、相続開始前に、贈与ないし売買を用いることにより、推定相続人または第三者に承継させることもあります。
この場合には、贈与税または譲渡所得税の課税対象となり、事業承継税制の適用を受けた場合には、猶予された贈与税の相続税への切り替えが生じるため、相続時にも手続が必要となります。
親族内承継とは、このような事業を相続人又は生前に推定相続人が承継する場合を指します。
MBOとは、Management Buy Outの略称であり、会社の経営者(社長等)が株式を取得して、会社の支配権を取得することです。
公開会社で行われる場合もありますが、非上場会社の場合には、親族外から招聘した経営陣が、同族株主から株式を買い取る場合がこれに当たります。
EBOとは、Employee Buy Outの略称です。従業員が株式を取得して会社の支配権を取得することです。MBOとの違いは、株式の取得者が経営者であるか従業員であるかによる違いとなります。
M&Aとは、mergers & acquisitions の略称で、会社の合併及び買収を総称しており、多数株式ないし全株式の取得、合併、事業譲渡、会社分割などを指します。
会社そのもの又は会社の事業を第三者が取得することを広く意味して使われています。
事業承継の局面では、後継者が親族内や会社内(経営者・従業員)にいない場合に、選択されます。
事業承継税制とは、非上場会社の株主たる経営者から、後継者に、当該非上場会社の株式を贈与又は相続により取得させる場合に贈与税又は相続税の納税を猶予し、その次世代の後継者に株式が贈与又は相続された場合には猶予税額を免除する制度です(租税特別措置法70条の7から70条の7の8)。
原則制度のほか、平成30年度の税制改正により特例制度が創設され、原則制度の要件が緩和されています。
それぞれ要件が非常に複雑であり、また、猶予期間が長期に及び、経営の選択肢を狭めてしまうという点も否めませんので、事業承継税制を活用するかどうかについては、弁護士や税理士等の専門家にお問い合わせください。
【参照】
国税庁ホームページ:「事業承継税制特集」
遺産相続・税務訴訟
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