法律コラム

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遺産分割協議書の記載例

はじめに

遺産分割協議が成立した場合、協議内容に基づき名義変更や解約の手続を行うために必要となるため、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には相続人全員が署名押印し、各相続人の印鑑証明書も交付してもらいます。

しかし、遺産分割協議書に不備があると相続手続きが進められず、改めて相続人全員から署名押印をもらい直さないといけません。その際に翻意されてしまう可能性もあり、実際、取り直しの協議書には署名押印をしてくれない、ということもあります。

遺産分割のように、本来、各相続人の利害が対立するようなケースでは、機運が高まり相続人全員の気持ちが合意に向かうような場合、その機会を逃すことなく、1度で遺産分割協議をまとめあげるのが望ましいといえます。そのためには、不備のない遺産分割協議書を作成することが重要です。

そこで今回は、遺産分割協議書の記載例について説明したいと思います。

01 柱書

遺産分割協議書の柱書では、まず、誰の相続について(被相続人の特定)、誰と誰が協議をしているのか(相続人の特定)を明らかにします。例えば、以下のように特定します。

記載例
  被相続人  ●● ●●
  最後の住所 東京都千代田区■■■■
  最後の本籍 東京都中央区■■■■
  生年月日  昭和■年■月■日
  相続発生日 令和3年11月■日

被相続人●●●●の遺産について、相続人■■■■と相続人◆◆◆◆は、協議の結果、次の通り遺産を分割し、取得することに合意した。

なお、相続人の中に、遺産分割協議から離脱するために、相続分の譲渡あるいは相続分の放棄をした法定相続人がいる場合、以下のように記載します。

相続分譲渡の場合
なお、被相続人の法定相続人である◇◇◇◇、同□□□□は、それぞれ、各相続分全部を相続人■■■■に譲渡した。

相続分放棄の場合
なお、被相続人の法定相続人である◇◇◇◇、同□□□□は、各相続分全部を放棄した。

02 遺産の特定

遺産分割協議書では、遺産の内容を一義的に確定できるように、遺産を特定して記載する必要があります。あいまいな記載により遺産が特定されない場合、名義変更や解約等の相続手続が行えない場合があります。

不動産

遺産分割協議に基づく相続登記を行う場合、遺産分割協議書は登記の添付書類となりますので、不動産を特定する必要があります。特定の方法としては、登記事項証明書の記載どおりに記載しておくのが望ましいでしょう。

土地の場合
  所 在  千代田区霞が関一丁目
  地 番  1番1
  地 目  宅地
  地 積  〇〇.〇〇㎡
        (被相続人の持分 2分の1)

建物の場合
  所  在  千代田区霞が関一丁目●番地●
  家屋番号  1番1
  種  類  共同住宅
  構  造  軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺2階建
  床 面 積  1階 〇〇.〇〇㎡
        2階 〇〇.〇〇㎡

マンション(区分建物)の場合
   一棟の建物の表示
     所   在   千代田区霞が関一丁目 ●番地●
     建物の名称   ●●マンション
   専有部分の建物の表示
     家屋番号    霞が関一丁目 ●番地●の301
     建物の名称   301
     種   類   居宅
     構   造   鉄筋コンクリート造1階建
     床 面 積   3階部分  〇〇.〇〇㎡
   敷地権の目的たる土地の表示
     符    号  1
     所在及び地番  千代田区霞が関一丁目●番●
     地    目  宅地
     地    積  〇〇〇.〇〇㎡
     敷地権の種類  所有権
     敷地権の割合  〇〇〇〇〇〇分の〇〇〇〇

なお、遺産が共有持分の場合は、上記の【土地の場合】における記載例のように、被相続人の持分を併記しておくのがよいでしょう。

金融資産

預貯金や株式、投資信託などの金融資産については、口座・銘柄・商品を特定できるように記載しましょう。

もっとも、預貯金額や株式、投資信託の金額(評価額)等は、遺産分割協議書締結後も変動する場合があります。そのため、仮に金額等を明記してしまうと、明記された金額のみを対象に遺産分割を行ったものと解されかねず、協議成立後に増えた部分については、相続手続を行えない場合があります。

そこで、金額が確定しているものを除き、金額等は明記しておかないほうが望ましいといえます。仮に金額等を明記するとしても、「〇〇円(相続開始日の残高)」などと記載しておくのがよいでしょう。

預貯金
 ・●●銀行〇〇支店普通預金(口座番号:1234567)
 ・ゆうちょ銀行通常貯金(記号:12345、番号:〇〇〇〇〇〇〇〇)
 ※なお、遺産に名義預金が含まれる場合は、「口座名義人」も記載して、遺産を特定しましょう

株式
 ・●●ホールディングス(証券コード:〇〇〇〇) 1,000株
 ・■■証券株式会社◆◆支店

投資信託
 ・●●グローバル8資産ファンド(毎月) 1,234,567口
  ■■証券株式会社◆◆支店
 ・□□MRF(マネー・リザーブ・ファンド) 99,999口
  □□証券株式会社●●支店

債権

被相続人が有していた債権も遺産となりますが、誰に対していつ発生した債権なのか、を特定できるように記載しましょう。

貸付金
 ・被相続人と■■■■との間の令和2年〇月〇日付金銭消費貸借契約に基づく貸付金債権

疾病入院保険金
 ・疾病入院保険金(独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構)
  保険証券記号番号 ●●-●●-1234567号
  契約者 被相続人

その他の財産

現金や動産、その他の財産なども、極力、特定できるように記載しましょう。

現金
 ・現金 1000万円(預貯金解約相当額、相続人●●●●保管)

ゴルフ会員権
 ・ゴルフ会員権 〇〇カントリークラブ(■■株式会社)
  会員番号 □□□□ 号

絵画
 ・題名 「◇◇◇◇◇◇◇」
  作者 ●●●●
  サイズ 縦〇〇cm×横〇〇cm

指輪
 ・ダイヤモンドリング(□□社製)
  サイズ〇号、重さ〇.〇g、〇〇カラット

特許権
 ・発明の名称 ■■組成物およびその製造方法
  特許番号 特許第〇〇〇〇〇〇号

03 代償分割の場合

代償分割とは、遺産の現物を特定の1人又は数人の相続人のみが取得し、それ以外の相続人には各相続分に基づく金員(代償金)を支払うとの内容で行う遺産分割方法です。例えば、遺産である自宅不動産に居住している相続人が、自宅を単独で取得したい場合に、代償分割を選択することになります。

代償分割の記載例
相続人■■■■は、第1条各号に記載の遺産を取得する代償として、相続人●●●●に対し、金〇〇〇〇万円を、本遺産分割協議成立の日から1か月以内に支払うものとする。振込手数料は、相続人■■■■の負担とする。

04 換価分割の場合

換価分割とは、相続財産を売却するなどして、現金に換えてそれを相続人間で分け合う遺産分割方法です。例えば、実家不動産の取得をだれも望まない場合などに、換価分割を選択することになります。

換価分割の記載例(代表者名義にする場合)
第●条 下記の土地(以下「本件土地」という。)は、換価分割を目的として、相続人■■■■が取得する。
       記
所 在 千代田区霞が関一丁目
地 番 1番1
地 目 宅地
地 積 〇〇.〇〇㎡

第●条 相続人■■■■は、本件土地を速やかに売却し、その売却代金から本件土地上に残置された動産の撤去費用、仲介手数料及び登記費用等本件土地の売却に必要な一切の費用、他の相続人への振込手数料を控除した残額を、以下の割合で分配する。
⑴ 相続人□□□□ 8分の1
⑵ 相続人●●●●、◆◆◆◆ 各16分の1
⑶ 相続人■■■■ 8分の6

換価分割の記載例(共有者名義にする場合)
第●条 下記の土地(以下「本件土地」という。)は、換価分割を目的として、相続人●●●●、同◆◆◆◆及び同■■■■がそれぞれ3分の1の割合で共有取得する。
      (不動産の表示は省略)

第●条 相続人●●●●、同◆◆◆◆及び同■■■■は、共同して本件土地を速やかに売却し、その売却代金から本件土地上に残置された動産の撤去費用、仲介手数料及び登記費用等本件土地の売却に必要な一切の費用を控除した残額を、前条の共有持分割合に従って取得する。

05 相続債務や葬儀費用

判例上、相続債務は遺産分割の対象とならず、相続分に応じて各相続人が承継・負担することになります。もっとも、相続人間の合意により、相続人の内部関係においては、特定の相続人が支払うよう合意することは可能です。その場合でも、銀行などの債権者に当然には対抗できませんので、別途、免責的債務引受の承諾を得る必要があります。

また、相続債務とは、相続開始時に存在した被相続人の債務ですが、葬儀費用は、葬儀会社と喪主との契約に基づき、相続開始後に発生する債務ですので、原則として遺産分割の対象とはなりません。もっとも、葬儀費用についても、相続人間の合意により、相続財産で負担することを合意することは可能です。

特定の相続人のみが負担する場合
相続人■■■■は、被相続人の相続債務及び葬儀費用の全額を負担する。

複数の相続人が債務を負担する場合
相続人■■■■及び同◆◆◆◆は、被相続人の●銀行からの借入金〇〇〇万円を各2分の1の割合で負担する。

06 新たに発見された遺産

遺産分割協議は、遺産分割協議書に記載された財産についてのみ成立します。もっとも、遺産分割協議成立後に動産や宝石、あるいは財布や現金などが発見される場合もあります。その場合、新たに発見された遺産については、協議書で取得者を決めておかない限り、改めて遺産分割協議を行う必要があります。

特定の相続人が取得する場合
本協議書に記載なき遺産又は後日判明した遺産については、相続人■■■■が相続する。

別途協議とする場合
「本協議書に記載なき遺産又は後日判明した遺産については、相続人間においてその分割につき別途協議する。」

07 登記簿上の住所が最後の住所と異なる場合

相続が発生した場合、被相続人の登記簿上の住所と死亡時の住民票の住所が異なる場合があります。その場合、住民票の除票や戸籍の附票により、登記名義人と被相続人が同一人物であること、つまり、その不動産が被相続人の遺産であることを明らかにする必要があります。

もっとも、亡くなってから5年が経過して戸籍の附票を取得できない場合があります。そのような場合、登記名義人と被相続人が同一人物であることについて、相続人全員で上申書を作成するという対応もできますが、遺産分割協議書とは別の書面を作成するのは手間ですし、書類管理の観点からも、作成する書類が複数になるのは望ましくありません。

そこで、遺産分割協議書の中に、先程の上申書の内容を盛り込んでしまっておくのが望ましいでしょう。

むしろ、登記を担当する司法書士さんとしてはこの条項があるととても助かると思いますので、遺産分割協議書を作成する場合には、常にこの条項を入れておくのが望ましいです。

記載例
被相続人●●●●と不動産所有権登記名義人●●●●は、同一人物であることに相違ない。

08 清算条項

遺産相続及び関連紛争を抜本的に解決するためには、清算条項を規定しておくのが望ましいです。

記載例
相続人■■■■、同◆◆◆◆及び同□□□□は、以上をもって被相続人の本協議書記載の遺産に関する紛争(不当利得、不法行為等の名目にかかわらず一切の紛争を含む。)が一切解決したものとし、本協議書に定めるもののほかは、何らの債権債務関係がないことを相互に確認する。

09 署名欄

遺産分割協議が成立したことを証明するために、末尾に、相続人全員で署名捺印をします。

各種の相続手続では、相続人の真意に基づき遺産分割協議が成立したことを証明するために、各相続人の印鑑証明書を提出する必要があります。そのため、署名欄の住所は、印鑑証明書記載の住所通りに記載しましょう。

また、あくまでの本人の意思で遺産分割協議を成立させたことを担保しておくためにも、氏名は自署し、実印を押印しておきましょう。

なお、高齢で筆記能力がないなど特別の事情がある場合、遺産分割協議書の署名欄に予め住所氏名を印字しておき、実印だけ押印する、という対応も考えられ、それでも相続手続自体は行える場合がほとんどだと思います。

もっとも、印字の場合、本当に本人の意思に基づき遺産分割協議が成立したのか争われる火種となりかねないので、事後の紛争防止の観点からは、住所氏名を、少なくとも氏名だけでも、相続人本人に自署をしてもらうのが望ましいでしょう。

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