法律コラム

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遺産分割における協議と調停と審判の異同

はじめに

遺産分割を行う場合、まずは相続人全員で協議を行い、協議がまとまらなければ調停を申し立て、調停でも話合いがつかなければ、審判で解決することになります。

それぞれの手続において、できることやできないこと、共通することやしないこと、議論の対象となる事項やならない事項などが異なります。

そこで今回は、遺産分割における協議と調停と審判の異同について説明したいと思います。

01 遺産分割方法の指定

遺言で各相続人が取得する財産が指定されている場合、例えば、「相続人Aには甲土地、相続人Bには乙マンション、相続人Cには丙銀行の預金を相続させる」などと指定されている場合には、遺言で遺産分割方法が指定されたもの(民法908条)として、遺言に従い遺産分割が行われます。

遺言で指定された内容が法定相続分を上回る場合には、同時に相続分の指定についても行われたものと解されます。その結果、その他の相続人の遺留分を侵害していれば、遺留分侵害額請求を行うことが可能です。

02 遺産分割協議

遺言がない場合は、相続人間の協議により遺産分割を行います。相続人全員が合意する内容であれば、必ずしも法定相続分どおりである必要はなく、法定相続分より多くても少なくても構いません。場合によっては、一切取得しない、という合意も可能です。

遺産分割の対象財産は、本来、相続発生時に存在し、かつ、遺産分割時にも存在する遺産です。そのため、すでに存在しない使途不明金や、相続発生後に発生する葬儀費用や遺産管理費用等は、本来、遺産分割の対象財産ではありません。もっとも、相続人全員が合意すれば、使途不明金や葬儀費用等も遺産分割の対象とすることが可能です。

また、相続債務については、原則として、相続発生と同時に、法定相続分に応じて当然に分割されて相続されることになるため、遺産分割の対象外となります。相続人間で、特定の者だけが債務を承継することを合意すること自体は可能ですが、あくまで相続人間の内部関係の合意にとどまり、当然に債権者に対抗できるわけではありません。債権者との関係でも特定の相続人のみが承継した形にするためには、別途、債権者の同意を得る必要があり、その場合、債務引受の手続が必要となる場合が多いと思います。

このように、協議の段階では、相続人全員が合意すれば、遺産分割の対象や方法などを柔軟に行えるのですが、自由度が高い分、各相続人の意向が強く示される結果、なかなか協議がまとまらない、ということも少なくありません。

遺産分割協議は、相続人全員が合意しないと成立しません。そのため、いかに合理的で平等な遺産分割案であったとしても、不合理な要求をする相続人が1人でもいてしまうと、遺産分割協議が成立しないということになってしまうわけです。

その場合は、協議の場を裁判所に移し、遺産分割調停により解決をしていくほかありません。

03 遺産分割調停

何度か話合いはしたけれどもまとまらなかった場合や、そもそもまったく話合いに応じてもらえない場合など、協議で遺産分割を成立させることが難しい場合は、そのまま協議を継続しても解決する見込みは極めて低いと思います。そのような場合は、早めに遺産分割調停の申立てをご検討いただくのがよいと思います。

遺産分割調停では、基本的に、①相続人の範囲を確定、②遺産の範囲を確定、③遺産の評価を確定、④修正事情の検討、⑤分割方法の決定、という順番で進めていくことになります。

特に、東京家裁では、上記①~⑤の順番で審理する運用が厳格に守られています。

【参照】
裁判所ホームページ:「遺産分割調停の進め方

このうち、②遺産の範囲は、先程も述べましたが、本来は、相続発生時に存在し、かつ、遺産分割時にも存在する遺産のみが対象となります。もっとも、協議と同様、相続人全員が合意すれば、使途不明金や葬儀費用、債務等についても、合意の対象とすることが可能です。

また、③遺産の評価については、例えば不動産や自社株の評価について相続人間で争いになることが少なくありませんが、その場合、不動産鑑定士や公認会計士による裁判所鑑定で、評価額を確定させることになります。

そして、④修正事情については、遺産の前渡しにあたるような生前贈与があれば、特別受益として遺産に持ち戻し、また、被相続人の財産の維持増加に貢献した相続人がいる場合は寄与分として考慮することになります。この場合、特別受益や寄与分があることを主張する相続人側で、特別受益や寄与分があることを証拠に基づき明らかにする必要があります

このように、遺産分割調停は①~⑤の順番で進められ、各段階において合意ができた場合、その合意内容を「中間合意」という形で調書に残しておきます。いったん中間合意をしておくと、同じ議論が蒸し返されることを事実上防ぐことができますので、調停が進行しやすくなります。そのため、調停の長期化を防ぐ目的からも、このような段階的審理及び都度の中間合意という運用が採用されています。

もっとも、調停もあくまで話合いであり、相続人全員の合意が必要になりますので、いかに合理的な遺産分割案、あるいは裁判所案が示されたとしても、相続人のうち1人でも反対すれば、調停は不成立となります。その場合、当然に審判手続に移行します。

04 遺産分割審判

審判は、裁判所が遺産分割の内容を定める手続です。そのため、相続人の合意が必要なわけではなく、また、相続人の意向が必ず反映されるわけでもありません。

審判の対象事項は、本来的な遺産分割対象財産に限られます。そのため、使途不明金や相続債務は審判の対象外となり、この点を解決するためには、別途、不当利得返還請求訴訟を地方裁判所に提起する必要があります。

また、特別受益や寄与分については、相続人間に争いがある場合、あくまで証拠上認められる場合のみ考慮されることになりますので、できる限り証拠を提出しておく必要があります。

地域によっても多少運用は異なりますが、審判手続は、調停においてすでに各相続人の主張や立証が尽くされており、裁判所が判断できる状態で審判移行するという前提のため、審判期日としては1~2回程度しか開かれないことが多く、長期間になるケースは例外的といえます。そのため、審判の移行前に、遅くとも第1回審判期日までには、できる主張はしておき、出せる証拠は出しておくのが賢明かと思います。

なお、審判内容に不服のある相続人は、審判の告知があった日から2週間以内に即時抗告という不服申し立てをすることが可能です。

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