
生前における遺留分対策の可否とその方法
事例で考える相続
2023/08/22
父の相続です。母は10年前に亡くなってますので、相続人は私だけ、と思っていました。
銀行担当者の方に、父の相続手続のために戸籍が必要と言われたので提出したのですが、
「お父様には、前の奥様との間に娘様がいらっしゃるようですので、その方からも署名捺印をいただけないと、預金の解約はできません。」
と言われてしまいました。。
父が再婚とは聞いておらず、まして、私に姉がいることは知らなかったので、正直ショックを受けました。
いずれにしても、預金を解約するためには姉に協力してもらう必要がありますが、名前も住所も電話番号も一切知りません。
このような場合、遺産分割をどのように進めていけばよいのでしょうか?
※架空の事例です。
異母兄弟と遺産分割を行う場合、まずはその方に遺産分割協議の申入れをする必要があります。そして、異母兄弟の連絡先の分からない場合は、戸籍の附票を取得して異母兄弟の現在の住所を調べたうえで、その住所に宛てて、書面で遺産分割協議の申入れを行いましょう。
それでは以下で、詳しく見ていきましょう。
目次
遺産分割のご相談では、まず相続関係を伺い、誰との間で遺産分割協議を行うのかを確認することから始めますが、事例と同様に、戸籍を取得して初めて異母兄弟の存在が発覚した、というケースも実際に起こり得ます。
日本では、統計上、3組に1組が離婚をしている状況にありますし、夫婦の形も多様化していますので、異母異父の兄弟姉妹がいることは、それほど珍しいことではないように思います。実際、ご依頼をいただく案件でも、異母兄弟や異父兄弟がいる遺産分割、というケースは少なくありません。
異母兄弟や異父兄弟がいる遺産分割の場合、それまでほとんど没交渉であったケースが多いため、
・そもそも相続人間で直接連絡を取り合いたくないので弁護士に間に入って欲しい
・遺産分割協議もすべて弁護士を通して行い、直接、会ったり話したりはしたくない
とのご要望をいただくことが少なくありません。
そのため、異母兄弟や異父兄弟がいる遺産分割については、弁護士が関与しているケースが多いのではないかと感じています。
遺産分割では、最初に相続人の範囲を確認し、誰が相続人かを確定させます。なぜなら、遺産分割協議は、相続人全員との間で行わないと無効となるからです。
そのため、誰が相続人かを正確に把握することが遺産分割の出発点ですし、とても重要といえます。
誰が相続人かを調査する場合、まず最初に戸籍調査を行います。
被相続人が、生まれてから死亡するまで本籍を移していない、というケースであれば、誰が相続人かは比較的簡単に調査できます。しかしそんな人は稀です。戸籍を遡っていくと、引越し、結婚、離婚、養子、認知・・・など、人それぞれの人生ドラマを目の当たりにするわけですが、ライフイベントごとに、転籍しているケースが多いといえます。
そのような場合、まずは現在の戸籍全部事項証明を取って、そこに記載されている「従前本籍」地を調べ、次はその自治体に過去の除籍や改製原戸籍を請求して、そこで判明した1つ前の本籍地にさらに請求を繰り返す・・・、というように、出生まで遡った連続した戸籍を収集します。
そして、相続人の直近の戸籍全部事項証明も取得し、ご存命かどうかを確認します。
以上のように、相続人調査は地道な作業であり、何度も転籍していたり、相続人が非常に多い場合などには、ある程度の時間がかかってしまいます。
相続人調査により、異母兄弟や異父兄弟の存在が判明した場合、先程も触れましたが、その方も含めて遺産分割協議をしないと、遺産分割協議は無効となってしまいます。
そこで、異母兄弟に遺産分割協議の申入れをする必要があり、そのために、異母兄弟と何とか連絡をとる必要が生じます。
兄弟姉妹の住所や電話番号、あるいは最近ですとSNSやショートメッセージ等での連絡も考えられますが、何かしらの方法でコンタクトが取れるのであれば、いったん連絡をしてみるのがよいと思います。しかし、事例の場合もそうですが、異母兄弟の場合、戸籍を取って初めて異母兄弟の存在が発覚することがあり、何の連絡先も知らないということが少なくありません。
そのような場合には、異母兄弟の戸籍の附票を取得して、現在の住民票上の住所を調べます(戸籍の附票から、現在の住民票上の住所が分かります)。
そして、住民票上の住所が分かったら、その住所に宛てて手紙を出し、遺産分割協議の申入れをします。
異母兄弟と無事に連絡が取れたあとは、通常の遺産分割と異なることはありません。遺産分割の協議を申し入れ、話し合いで解決できない場合は遺産分割調停を申し立て、調停が不成立となれば審判により、遺産分割を行うことになります。
なお、戸籍の附票から判明した住所に手紙が届かなった場合、まずはその住所の現地調査を行い、それでも現在の居所が明らかにならなければ、不在者財産管理人の選任申立てし、同管理人を選任したうえで、同管理人との間で、遺産分割の協議、調停、審判を行うことになります。
POINT 01 異母兄弟がいる遺産分割では弁護士関与率が高い
POINT 02 異母兄弟の現住所は、戸籍の附票から判明する
POINT 03 連絡が取れたあとは、通常の遺産分割と同様、協議・調停・審判での解決を目指す
いかがでしたか。異母兄弟間の遺産分割では、直接連絡を取り合いたくないというニーズが強く、弁護士に依頼して遺産分割を行うケースが多いように思います。
事例のケースでは、戸籍を取得して初めて異母兄弟の存在が発覚しているため、連絡先等を知らないものと思われます。そのような場合には、まずは異母兄弟の戸籍の附票を取得し現在の住所を調べたうえで、その住所に宛てて手紙等を送付し、遺産分割協議の申入れを行うことになります。
戸籍調査は手間も多く、慣れていないと時間が非常にかかったりしますので、スムーズに相続人の範囲やその住所等を把握するためには、弁護士等に依頼し、職務上請求で調査してもらうことをご検討されてみてはいかがでしょうか。
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